平成24年3月16日に、全国で30番目の国立公園として誕生した「霧島錦江湾国立公園」のエリア内に位置するえびのや霧島は、鹿児島・宮崎両県にまたがる日本特有の火山地帯です。
数多くの温泉を山々の懐に抱え、ミヤマキリシマやノカイドウなどの花々、秋の燃えるような紅葉、冬には木々を神秘的な美しさで覆う樹氷など、四季折々の見どころにも事欠かない所です。
また、霧島は霧島神宮や高千穂峰をはじめ、多くの天孫降臨神話の言い伝えが残る神話の里でもあり、自然と神話が密接に結びついており、日本でも有数のパワースポットになっています。
今回は、パワースポットの代表格ともいえる霧島神宮や周辺の見どころをご紹介します。
■霧島神宮由緒
霧島神宮は当初、天孫降臨の地である高千穂峰山頂に鎮座したと伝えられており『延喜式』神名帳には、日向国諸県郡霧嶋神社の名が記載される式内社です。
6世紀に、高千穂峰山頂と御鉢の間の浅い谷である「背門丘(せとお)」に、欽明天皇の命により慶胤という僧侶が「瀬多尾権現宮」として社殿を造営しましが、活火山の火口である御鉢のすぐ脇にあったことから噴火により度々焼失したため、10世紀半ばの天暦年間(平安時代)に性空上人が高千穂峰西麓の瀬多尾越(現在の霧島神宮・古宮址)の地に霧島神宮を遷宮し再興しました。
この時の遷宮先が霧島神宮古宮址です。ところが、この地でも噴火の影響で度々炎上し、文暦元年(1234)の噴火で全焼した後は250年間、行在所に仮鎮座していました。
その後、戦国時代の文明16年(1484)に、島津第11代当主・島津忠昌の命により僧・兼慶が、現在の地に遷宮・再興しました。しかし、建物はその後も爆発に見舞われ炎上し、正徳5年(1715)に、現在の場所に社殿と別当寺が建立されました。
度重なる噴火と出火で、文化財や古文書のほとんどを焼失・散逸してしまったものの、霧島九面と社殿は現存しています。桃山時代に、神宮に奉納されたという貴重な木彫りの九面は、事前に社務所に予約をすれば拝観も可能だということです。
■ご祭神
霧島神宮は、天孫降臨伝説で有名な高千穂峰を本宮としており、神武天皇の祖先である天饒石国饒石天津日高彦火瓊瓊杵尊(あめにぎしくににぎしあまつひだかひこほのににぎのみこと)を主祭神に、相殿に后神の木花開耶姫命(このはなさくやひめ)・御子神の彦火火出見尊(ひこほほでみのみこと)・その后神の豊玉姫尊(とよたまひめのみこと)・ウガヤ不合尊(うがやふきあえずのみこと)・その后神の玉依姫尊(たまよりひめのみこと)・初代天皇神倭磐余彦尊(かんやまといわれびこ)=神武天皇の七柱をお祭しています。
■瓊々杵尊と天孫降臨
葦原の中つ国を平定したとの報告を受けた天照大神は、孫の瓊々杵尊に日本の国を治めよと仰せられ、瓊々杵尊は三種の神器である勾玉・鏡・草薙の剣を携えて、高天原から高千穂峰の頂に7人のお供の神と1人の道案内の神を引き連れて、豊葦原の水穂の国に降り立ったと言い伝えられています。
○七人の神・・・天児屋根命(あめのこやねのみこと)・太玉命(ふとだまのみこと)・天鈿女命(あまのうずめのみこと)・石凝姥命(いしこりとめのみこと)・玉祖命(たまおやのみこと)・天忍日命(あめのおしほひのみこと)・天津久米命(あまつくめのみこと)
○道案内の神・・・猿田彦命(さるたひこのみこと)
■ちょっと足をのばして
〜えびの高原で四季の自然を楽しむ〜
標高1700メートルの韓国岳の山裾に広がるえびの高原は、かつて韓国岳が噴火した際に、吹き飛ばされた山がバラバラになってできたといわれる高原です。
秋に高原一面を埋め尽くす、えび色のススキの独特な色合いは火山ガスに含まれている硫気の影響によるものだそうで、「えびの」の地名は、このえび色のススキからきているといわれています。
季節ごとに表情を変えるえびの高原は、春から夏にかけては、世界でここだけに自生しているといわれる国の天然記念物のノカイドウや、鹿児島の県花でもあるミヤマキリシマが見頃を迎えます。
特に、ミヤマキリシマは5月から6月にかけて、霧島連山を淡紅色のベールで一色に染め上げ、高千穂峰〜中岳〜新燃岳の斜面にかけての美しい群生は圧巻です。
初夏になると、付近の高原火口湖は新緑の緑に彩られ、青く輝く湖面は一際美しく、その景観に草花や樹木が美を競い命の躍動する様を楽しむことができます。また、標高1200メートルの高原は、夏でも平均気温は20度で、山並みを吹き抜ける爽涼な高原の風は心身を癒やしてくれます。
草木の紅葉が眩しい秋になると、高原に広がるえび色のススキの穂が波打つ景色は壮観で、時々刻々と異なる表情を見せてくれます。
樹氷と雪原が幻想的な冬を迎えると、「ここは南国」ということを忘れさせてしまうほどの別世界の山上となります。葉や枝が樹氷に覆われた白銀の世界が広がる真冬は光が当たる度に神秘的な輝きを放ち、自然の厳しさ、美しさの融合する感動の季節ともいえます。
雲に手が届くほど空に近いような気がする霧島の山々は、優しくも、神々しい壮大な大地の公園といえるかもしれません。四季折々の装いで訪れる人々を魅了し続けてやまない霧島は、五感を総動員させて余すことなく満喫したくなるスポットです。
■「霧島をさるく」
下の画像をクリックしてください。写真入のガイドをごらんいただけます。
※「霧島をさるく」とは「霧島を訪ねる」ということです。