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平成24年3月16日に、全国30番目の国立公園として『霧島錦江湾国立公園』が誕生しました。
霧島錦江湾国立公園は、鹿児島と宮崎2県にまたがる霧島屋久国立公園を分割したもので、既存の指定地域である霧島・桜島に新たに世界的にも希少な海域カルデラとされる錦江湾奥の姶良カルデラや、神造島、若尊鼻、若尊海山、重富干潟の5か所が加えられ、約7万4千haの国立公園として誕生しました。
通称錦江湾と呼ばれ県民に親しまれている鹿児島湾は、薩摩半島と大隅半島に挟まれた南北60km・東西20kmの細長い湾で、南北に連なる断層に沿った大地が沈んだことによって形成されたといわれています。その後、阿多カルデラや姶良カルデラの火山地形が加わり、現在の鹿児島湾となっています。今回、国立公園に指定された姶良カルデラの大きさは、南北約23km・東西約24km・面積429平方kmで、日本最大級といわれる阿蘇カルデラとほぼ同じ大きさであり、いかに大きいかがわかります。桜島フェリー乗船中、進行方向北側を見ると、切り立った崖が海へと落ち込んでおり、そのまま水深100mまで続いています。カルデラ東部にあたる大隅半島でも海岸沿いに崖が続いており、姶良カルデラの外壁を確認することができます。
さて、姶良カルデラの南縁に位置する桜島は、大正3年の大噴火で流出した約33億トンの溶岩が黒の瀬戸海峡を埋め尽くし大隅半島と陸続きになりました。現在も活発な火山活動が続いていますが、姶良カルデラ内にあり若尊周辺より深さ約200mの海底に位置する若尊海底火山は、桜島とマグマだまりを共有していると考えられており、福山沖の海面では若尊海底火山の活動による「たぎり」と呼ばれる火山ガスの発砲現象が見られます。
この現象が見られる付近には『サツマハオリムシ』といわれるゴカイに近い環形生物の新種が生息しています。口も消化官もなく、体内の共生細菌が無機物を有機物に変えて生きている不思議生物のサツマハオリムシは、北マリアナの3か所と南海トラフの1か所で分布が確認されており、鹿児島湾では1977年に発見され、1993年に水深80〜100m地点での採取に成功し、1997年5月に開館した鹿児島水族館に常設展示されています。
火山活動によって形成された自然景観が中心の、霧島錦江湾国立公園。
私たち鹿児島県民にとっては、普段の生活の中で日常的な癒しの場となっている鹿児島湾ですが、海底火山や桜島など地球内部のエネルギーを実感できる非常に貴重なエリアでもあります。国立公園となった鹿児島湾やその界隈、それらにまつわる場所などへ新たな気持ちで訪れてみると「地球が生きている」ことを改めて実感できるかもしれません。