ゲスト卓話「『篤姫』フィナレーに向けて」 NHK鹿児島局長 亀山正人氏
2008.11.05 於:鹿児島西ロータリー・クラブ第2245例会
大河ドラマ「篤姫」も早いものであと6回。2年前の夏、「篤姫」が決定した時、公表前に地元の何人かにお伝えした時の最初の反応は「それは誰?」でした。今はどなたと会っても「篤姫」「篤姫」ですから隔世の感です。鹿児島での視聴率41%という回もあったくらいで、県民はもとより全国から熱い支持をいただいています。いま「鹿児島で連想するものは?」と全国で聞いたら「桜島・西郷・焼酎」のいわゆる「3S」を抜いて「篤姫」が1番ではないか、そんな気もします。
「篤姫」は幕末ものとして初めて女性を主人公にしました。幕末という、激しい時代の流れに翻弄されながらも、自らを失わず、ひたむきに生きようとする人間の姿を、ホームドラマ風に家族愛や友情を絡めて描いています。幕末ものはあたらないというのが大河ドラマのジンクスでした。が、今年は「こどもと一緒に見られる」「懐かしい家族を見る思い」といった共感の声を多く頂戴しています。普段、NHKドラマを見ないとされる20代から40代の女性に多く見ていただいていることも嬉しいことです。
ドラマには脚本家や制作者側がこめた思いやメッセージがあります。私はそのひとつが「人それぞれの役割とそれを果たす覚悟」ではないかと受け止めています。第1話から“キメのセリフ”として、本当に度々出ています。ドラマの重要な対話シーンでしっかりと描かれますと、現代社会に響くキーワードになっているのではないかと思います。
国の歴史を扱うということで時代考証には特に神経を使っていますが、細かい配慮もしています。「場面切り替え」に使う「月」の形にまでこだわって史実との関係を調べたりとか、黒船来航シーンで、当時の星条旗の星の数や形を調べて作ったりとかです。小道具も大事ですが、篤姫と尚五郎・のちの小松帯刀との友情を支える小道具として、また、篤姫と将軍・家定が心を通いあわせる仕掛けとして「囲碁シーン」を使いました。その指導には、現役の女流棋聖があたるほどの気の入れようでした。ハリウッド映画でも使われるVFXという映像合成技術もリアリティを出すために駆使しています。
NHKでは「篤姫」で鹿児島に関心が向いている機会に、この県の持つ多彩な魅力を地域に、全国に発信していきたいと考え、実行に移してきました。2日に6時間全国に生放送した「おーいニッポン私の好きな鹿児島県」もその一つです。今後、篤姫トークショーも開きますが、こうしたこと一つ一つが「篤姫」風にいうなら、地域に貢献する自分たちの「役割」であり、今年は「覚悟」をもって取り組んでいるということでして引き続き、地域貢献に微力を尽くしたいと考えています。
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