平成20年3月19日 山下 皓三 会員〈山下歯科医院〉卓話
『創立100周年を迎えた鹿児島県歯科医師会 ―歯科医療・福祉のあり方を知ってもらう好機に』
社団法人鹿児島県歯科医師会は今年創立100周年を迎えます。明治40年10月、会員総数6名で発足しました。本県歯科医師会の役割は、公益性の社団法人として歯科保健医療、福祉介護を通じて県民の健康と生活の質の向上へ寄与する学術団体です。
鹿児島県歯科医師会は明治・大正・昭和の変遷の中で明治39年歯科医師法が公布されたのをきっかけに設立され、会員数も徐々に増加し、組織としての機能も少しずつ充実して公益性を確立してきました。本会が会館を持ったのは昭和27年で、鹿児島県開拓協会跡を入手した時に始まりました。その後、会務が多忙になるに従い会館も手狭となり、照国町の現在地に昭和45年(1970年)に地上6階の本館を竣工。昭和53年(1978年)には新館を竣工し、本館一部を改修しました。
また、平成18年3月には歯科学院専門学校歯科衛生師科が2年制から3年制に移行するのにともない、地上6階の新校舎が落成しました。会館には、口腔保健センター・歯科学院専門学校・研修室・多目的ホール・事務所・役員室があり、県下の歯科保健医療福祉の情報発信基地としての役割を担い、また休日診療・障害児者歯科診療、さらに巡回診療車による障害児者診療や離島などの診療に寄与しています。
20世紀から21世紀へと、歯科界は国情と相まって進展を続けてきましたが、その渦中にあっても常に国民・県民歯科医療の確保推進に真剣に取り組んできました。私たちは、先人達がコツコツと積み上げてきた歯科保健医療の発展への情熱を継承し、有形無形の輝かしい伝統を顕彰すると同時に、先輩が築いた礎に、私たちの新たな息吹と心血を注ぎ吹き込み、次世代の後輩たちにしっかり伝承する責務があると思います。この創立100周年記念事業を通じて県民の方々に歯科保健医療福祉の在り方を認識していただく絶好の機会だととらえて活動いたします。
本県歯科医師会は、今日の県民・国民の多様化する健康価値観に対応するために、国策として掲げられました「新健康フロンティア戦略」や、生活習慣病予防対策としての「健康日本21」の精神を積極的に取り上げ、その重要性と「かかりつけ歯科医師機能」の充実を会員と県民の皆様に訴えてまいります。
また、鹿児島県においては少子高齢化が日本で最も進んでいる現状を踏まえ、歯科保健医療に新たなる展開をはかり、積極的に取り組んでまいります。
我が国は、国民皆保険のもと、誰もが安心して医療を受けることができる医療制度を実現し、世界最長の平均寿命や高い保健医療水準を達成してきました。しかしながら、急速な少子高齢化・経済低成長・国民生活や意識の変化等医療を取り巻く様々な環境が変化してきており、医療制度改革も進められています。
これまでの歯科保健医療は歯科医院での歯科疾患中心の治療と失われた咀嚼機能の回復が主で、予防対策や全身の健康増進についての対応が不十分でした。しかし、口腔ケアが障害を持つ高齢者の誤嚥性肺炎防止や介護の重症化の予防に有効であることなどを踏まえ、これからの歯科保健は地域社会の中で医科と連携を取りながら進めていくべきだと考えています。
まず、歯科保健の根本と言うべき、「口の働き」から「口腔ケアの重要性」までの知識を啓発ができるようにしていきます。例えば、糖尿病と歯周病の関連、肥満と咀嚼の関連など生活習慣病と口腔が関係することは、県民には余り知られていないのが実情です。生活習慣病対策が必要なハイリスクグループへの個別保健指導においては、歯科健診、歯科保健指導が有効であるとともに、歯科治療によりリスクを管理することも大切です。
また、在宅医療を求める患者さんはさまざまな基礎疾患を持っています。在宅に関わる歯科医師はその基礎疾患を把握した上で、訪問歯科診療や療養管理・指導、口腔機能の維持回復、摂食・嚥下リハビリテーション、口腔ケアを行うことはいうまでもありません。このことが患者さんの免疫力を高め、誤嚥性肺炎を予防につながることを踏まえ、積極的に医療との連携を進め、在宅歯科医療の充実を図っていかねばなりません。
鹿児島県歯科医師会は創立100周年を機に、こうした取り組みの推進や記念事業の展開を通じ県民の生活の質の向上や健康寿命の延伸に寄与してまいります。
山下歯科医院
山下 皓三
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