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平成20年4月24日 山元 將孝 会員〈山元経済塾 FPドリーム鹿児島代表〉卓話

『経済理論と生の経済・経営』


 私の仕事は「いま経済で起こっていることを、易しく、分かりやすく伝える」ことである。易しく伝えることが業となるくらい「易しくない」と考える方が多いのである。 そもそも、伝統的経済理論では、市場参加者は合理的な行動をとることが前提になって物事を考える。
 そういったなかで、2002年、ダニエル・カーネマン教授がノーベル経済学賞を受賞した「行動経済学」という学問は、「人間は不確実性下では合理的な判断をするとは限らない(人間は経済学が想定する規範的な合理性とはかけ離れた意思決定をする)」ということを示し、経済学に新たな分野として醸成させた。
 こういった不確実性下における人の心理は判断を誤らせてしまうことが多い。セミナーなどでこういった「経済と心理」を題材に話すとき次の2つの例を挙げ参加者に質問する。
 
Q1)
新規事業が成功し、プロジェクトに関わった全員に、下記の条件で賞与が出ることになりました。各自が自由にAかBの封筒を選択できます。あなたならどちらを選びますか?
A:必ず80万円入っている
B:100万円入っている確率は85%。しかし15%の確率で1円も入っていない
 
Q2)
新規事業が失敗し、下記の条件でプロジェクトに関わった全員が、既にもらった賞与を返して損失を穴埋めすることになりました。あなたならどちらを選びますか?
A:80万円を支払う
B:100万円支払う確率が85%。だが15%の確率で全く支払わなくてもよい
 
 Aの選択肢の期待値は80万円であり、Bの選択肢の期待値は85万円であるから第1問ではB、第2問ではAを選択することが合理的な選択である。
 しかし、セミナーでアンケートをとるとQ1は参加者の8割くらいの方がA、Q2は6割くらいの方がBを選択する。
 実際の意思決定の中では、理論上合理的な判断がどちらであるかはわかっているものの、実際にその選択ができないケースは少なくない。
まだ、今のケースのように合理的判断がどちらであるかがはっきりしているケースはいい方である。実際の経済では多くの参加者の様々な利害関係があり、単純なものではない。消費者と労働者、経営者といった三者の視点で見てみると、
 消費者は高品質で安い商品(サービス)を望み、労働者は自身の労働に対する対価をできうる限り高くで売ることが合理的な行動である。価格は「需要」と「供給」で決まる。賃金も同様である。供給超過分野の労働は低所得に、需要超過分野の労働は高所得になる。この点から考えると、最近のワーキングプアの問題は理論的には至極当然である。しかし、経営者にとっては悩ましい状況が続く。合理的な選択が明確ではないからである。まだ、消費者=労働者だった時代には消費増を期待した賃金増という選択肢はあり得たのだが、近代の経済のグローバル化により垣根が取り払われたことで上記需給バランスはさらに崩れている。日本が経済力のあるうちには日本以下の国から高給を求める低賃金労働者が流入するため、単純労働についてはいくらでも低賃金労働者が確保できる。
 日本はグローバル化し、鹿児島も都会化の波に飲まれようとしている。グローバルな世界では価値観は多様化し、場合によっては正義も異なる場合がある。Jパワーの問題を取り上げるまでもなく、日本の市場は外国人から見ると閉鎖的と映る場面が多い。こういう場面が増えてくると、グローバルな資本は流入しない。同様に鹿児島も地方の特異性を強調するならば、外国人のみならず、国内の他県の人にとって、また若い世代にとっても閉鎖的と映ることになる。この世界の合理性は、経済成長を追求する中では非常にシビアなものとなる。
 旅、車、酒、若者がけん引した消費市場から20代が距離を置きつつある。20-29歳の海外旅行者数は1996年の463万人から2006年には298万人と、10年間で35.7%も減少した。  20代男性の乗用車保有率は95年の81%から05年には74%に減り、同年の全世代平均(84%)を下回った。34歳以下の単身男性の酒への支出額は4年前より26%も減少した。いずれの統計も若者消費の縮小を示す。
 「不況下で育ち、超合理主義的な感覚を身につけた」だけであり、ケチになったのではないとの分析もある。想定を超える超合理主義世代を取り込むには、価値観を共有する同世代の感性が必要となる。
一口に豊かさといっても「物的豊かさ」「心の豊かさ」と領域は広い。合理性の追究というのは容易なことではないのである。
 

 

山元経済塾 FPドリーム鹿児島
代表 山元 將孝

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