平成20年1月24日 有馬 戦男会員〈太陽熱温水器株式会社〉卓話
トルコを旅して
1月24日から2月2日までの10日間、商用を兼ねてトルコ共和国の旅をした。国土は日本の2倍、人口は7,320万人で、きわめて親日的な国である。
仕事柄、温水器の設置状況に自然と目が向いたが、各家庭やアパートは屋上いっぱいに太陽熱温水器が設置されていた。市街地の高いビルばかりでなく、郊外に行けば行くほど漏れなく設置されており、資源・エネルギー対策は国民生活の隅々まで徹底しているように感じた。
驚いたのはガソリンの値段が1リットル当たり300円もしたことである。トルコは産油国だと思っていたのに何故か。聞けば、石油はアメリカの指導でアメリカから輸入し続けている。トルコ国内に埋蔵される原油は将来の子供たちのために、また世界の環境保護のために保全している。そうすることが子孫繁栄の道であるという基本戦略に基づいた国民の選択だ。
目的がはっきりしているから、国民はリッター300円でも文句一つ言わず、国を挙げて資源や遺跡を大切にし、節約にもさまざまな工夫をこらしている。まずガソリン代が高ければ、無駄な走行はしないし無駄な車も買わない。各家庭の明かりは暗くなってからでないと点けない。しかも点灯するのは、使っている1室だけである。
ホテルはどこへ行っても、浴室のドライヤーは1〜2分で電源が切れるようにセットしてあり、初めは故障しているのではないかと思った。ガイドさんに尋ねてみると、環境問題には全世界挙げて取り組んでいることだから、外国からのお客でも喜んで了解していただけると思うという返事だった。
ほんとに徹底したもので、しかも国民が自主的に取り組んでいる。それがトルコ国民の常識であり、なにごとも本気で取り組めば常識もまた進化するものだなと感心するばかりだった。
教育についても認識を新たにした。以前はトルコでも小学6年・中学3年が義務教育とされてきたが、つい最近、小学5年・中学3年・高校4年の義務教育制度に変わった。小学校の5年制は、このレベルまでは家庭で親が子供の個性を大切にして常識にもとづいたしつけ教育を大切にしたいため。また、高校の4年制は、ハイレベルの教育と情操教育を通して国際化に対応できる人間育成を目指すためということだった。
ヨーロッパでもほとんどの国は、子供たちの常識教育は子供の個性を一番理解している親がするものであり、学校では教師が知識だけを教えている。もし子供が学校で問題を起こせば、子供の親が責任を負うというのが普通の考え方だ。日本ではまったく逆の「常識」がまかり通る昨今の風潮だが、せめてわが子の常識教育ぐらいは各家庭の責任で行うべきだろう。
トルコの制度改革が意図するものを聞いたとき、将来の日本を担う子供たちにとって、先ずは親とのコミュニケーションを促すことが一番大切だという感を深くした。東南アジアの国々にとって経済大国日本の教育制度は学ぶべき対象だったが、いつの間にか「反面教師」とすべきものとなってしまった。すでに、日本の子供たちの学力は世界27番目まで落ち込んでいるのである。
太陽熱温水器株式会社
会長 有馬 戦男
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