ゲスト卓話 有村佳子さん(指宿ロイヤルホテル代表取締役会長)
「鹿児島の未来・オンリーワンの観光・オンリーワンの産業」
2007.11.28 於:鹿児島西ロータリークラブ第2200例会
「私は10月、首相官邸に招かれました。全国から6人が招かれ、九州からは私一人でした。官邸内では、増田総務大臣・町村官房長官・太田大臣など10人の大臣副大臣からヒヤリングを受けました。
ヒヤリングのねらいは地域活性化の取り組みを実践している地域・人から生の声を聞こうというもので、私は、指宿地域で取り組んできた「スパヘルス」事業についてお話させていただきました。
これは県工業倶楽部が音頭をとって発足した「食・温泉・運動融合化研究会」の活動が始まりでした。平成14年9月に発足した研究会は、鹿児島県の独特の食材・豊富に有る温泉・体に必要な運動を取り入れた「健康増進産業」の可能性を探ろうというもので、私も誘われて入会し研究会の代表となりました。
最初はとまどいもありましたが、知事も協力するというので心強い限りでした。そこで医学的な知識が必要だというので、まず鹿児島大学医学部の協力をお願いしました。運動については鹿屋体育大学、行政からは県の保健福祉部、それに県栄養士会、地域医療関係では県医師会の協力もなんとか得られて産学官での研究会がスタートしました。
協力していただいた先生によると、「現代人は背広を着た縄文人。人間の体のメカニズムは太古から変わらないのに、夏は冷房・冬は暖房の生活だから、どうやっても医者が儲かるようになっている」ということでした。
健康増進について1年間研究会を開き、平成16年7月に指宿ロイヤルホテルモニタリング調査を行いました。年齢40歳から59歳までの未病の男女10名に4泊5日滞在をして頂き、初日各種検査の結果、1日の摂取量1600・1800・2000キロカロリーの3グループに分けた食事を食べて、午前と午後運動と砂むし温泉入浴をする。5日目に初日と同じ検査を行い、どれだけ改善されたか、されなかったかを検証しました。
この間、ウオーキングマップの作成、800キロカロリーの夕食メニュー作りなどにも取り組み、運動と地産地消の健康食品を使って「健康体がより健康になる」という大変画期的な効果を確認することができました。協力していただいた先生によると、なんと一人当たり45万円のコストがかかったそうです。
現在、指宿温泉の政府登録9件のホテル旅館で、この「食・温泉・運動」を取り入れた滞在型保養観光《スパヘルス》計画を進めており、JTBと商品開発に向けて行動しています。
平成14年財政破綻し閉鎖した、グリンピア指宿跡地を地元の新日本科学が落札し、世界的な研究施設《メディポリス指宿》を開設することになりました。すでに6月にはクリニックが開業しました。また2011年からは、粒子線による癌治療が始まります。粒子線治療は現在、文部科学省が千葉県と兵庫県の二箇所で研究をしていますが、民間では指宿が第1号です。
メディポリスには治療機が3台入ることになっています。この治療は最短でも10日は必要だといい、まさに長期滞在型が定着する可能性を秘めています。観光産業には願ってもない効果が期待できます。2011年といえば、九州新幹線全線開通の年。癌治療には日本だけでなく各国から来られます。鹿児島県はアジアに一番近い場所にあります。指宿は単なる観光地ではなく、医学研究による学術研究都市としての展望が開けるように思います。
健康産業は4兆円の需要があると言われていますから、付随した新しい産業が起きる事になります。この事業に取り組んで、私自身「観光こそ“ものづくり”である」と認識を新たにすることができました。
鹿児島県は600キロメートルの海を持っています。健康産業は離島バージョンも可能です。それらは鹿児島だから出来るものであり鹿児島の未来は大きく開かれていると感じます。」
鹿児島西ロータリークラブ・アーカイブス