課題作文に467点の応募、心にしみる作品多数
フォーラムには聴衆も参加して、熱い討論が交わされた
第2回4世代フォーラム(鹿児島西ロータリークラブ主催 国際ロータリークラブ2730地区・鹿児島市内分区協賛 鹿児島県教育委員会ほか後援)が6月2日、鹿児島市内の南日本新聞社「みなみホール」で開かれた。
今回のテーマは「心の絆」。初めての試みとして、事前に市内の小、中、高生や専門高生を対象に「私の家族」「心の絆」をテーマに作文を募集したところ、467点もの作品が寄せられた。この中から優秀賞5点を含む108点を選び、文集にして会場で配った。
梅雨入りした鹿児島地方は、この日朝から激しい雨に見舞われたが、会場には約170人が詰めかけ、「絆」というテーマに対する関心の高さをうかがわせた。
初めに、主催者を代表して徳留忠敬・当クラブ会長が「家族の絆、人と人との絆を、改めて見つめ直す機会にしてほしい」と挨拶、冨永国俊・2730地区ガバナーも登壇、祝辞を述べた。
この後、作文で優秀賞に選ばれ、表彰された西田小5年 中能笙太郎君ら5人が、自分の作文を朗読、客席から大きな拍手を受けた。
続いて開かれたフォーラムには、小学生から70代のパネラー7人が登壇、コーディネーターの古木圭介・当クラブ会員を中心に熱い討論が交わされた。
「心の絆が現代社会の中で失われつつあるのではないか」という問題提起を受け、大人世代からは、若い時のしつけの大切さや思いやりの心の大事さが強調される一方、若い世代からは「絆とは考えるものではなくて、人とのかかわりの中で感じるものではないか」「傷つくことを恐れず、もっと自分の意見や考えを率直にぶっつけ、互いに理解を深めていくことが大切ではないか」といった意見も出された。
会場には親子連れや若い人たちの姿も目立ち、客席からの発言も多く出され、2時間余にわたり、会場はさわやかな熱気に包まれた。
※写真右から
西田小5年 中能笙太郎君
鹿児島玉龍中2年 藤山美月さん
池田学園池田中2年 福崎由城君
池田学園池田高1年 町田紗菜さん
鹿児島歯科学院専門学校1年 菊永有花さん
喜田治男さん(鹿児島西プロバスクラブ)
深尾兼好さん(鹿児島西ロータリークラブ)
幸本直之さん(鹿児島西ローターアクトクラブ)
安藤舞桜さん(鶴丸高校)
吉満倫子さん(鹿児島高校)
※ ほかに作文朗読の藤山さんと中能君
◆以下、パネラーの発言要旨と主催者側、一般参加者を代表してのそれぞれ感想です。
喜田さん: |
戦後60年間、日本はアメリカに追いつき追い越せでやってきたが、追いついてしまった。
しかし、実態は物欲の強い国民が多くなってしまった。 |
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深尾さん: |
本来、何処にも誰にも当然のようにあった「絆」だが、現代ではなくなっている。公園に子どもたちの姿がなくなり、悪ガキなどもいなくなった。自分たちの小さいころは子供同士が喧嘩したり、チョイ悪先生がいたりして、その中でお互いの絆が生まれていた。 |
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幸本さん: |
「絆」ということを口にだして言うことは必要なのかどうか。 |
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安藤さん: |
クラスの中であまり絆について考えたことはなかった。実感がないのが正直な気持ちだ。 |
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吉満さん: |
「絆」は声に出して語るものではないと思う。ふとしたときに気づくことだと思う。例えば友達と笑いあっているときとか。 |
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中能さん: |
自分は外で遊ぶタイプだ。西田町の公園でいつも遊んでいるので見てほしい。家族とは最近トランプをしている。一緒にできるのは土日である。 |
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藤山さん: |
「絆」は心で感じることだと思う。友情を大切にして目標に向かって生きていきたい。クラシックバレーやピアノを習っているが、将来はそれらを活かして舞台の演出などをやってみたい。 |
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場内から: |
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◆コーディネーター役を務めた 古木圭介会員
多くの意見が出されました。教育や「心の絆」については永遠の課題かもしれません。マニュアルで解決もできません。特効薬もありません。
今の教育は「良い子」を作ることを目標に親も学校も必死になっている向きがありますが、教育の本来の目的は「良い社会人」を作るところにあった筈です。
今回のフォーラムを通じて、大人たちが子どもを社会の犠牲者にしないようもっと「心の絆」について考えるきっかけになれば幸いです。
◆実行部隊のリーダーを務めた 中園雅治・社会奉仕委員会委員長
委員会での打ち合わせは10回に及んだが、結果的にはもっと早く準備を始めれば、こんなにバタバタせずにすんだと思う。初めての課題作文の募集も丁度、学期末から新学期と、学校の一番忙しい時期と重なり、審査までの時間も短くなり、学校や審査員にも迷惑をかけた。それに、当日、思うように動員ができなかったのも残念だった。
いろいろ反省点はあるが、フォーラムそのものはコーディネーター、パネラー、また会場からもいろんな意見が出て、沢山の問題提起を含んだ、中身の濃いものになったと思う。
会場に来ていない人、本当は一番聴いてもらいたい人に、フォーラムの内容、メッセージを、どうすれば伝えることができるのか。いい内容だっただけに、このまま埋もれさせてはいけないと思う。
そのためにも、報告書を作成し、記録として残すことにしているが、これをどうしたら
有効活用してもらえるのか。いいものをやった、作った、という自己満足で終わらないようにしなければならない。
今後のことで言えば、フォーラムをさらに意義あるものにするために、教育委員会などの行政、PTA,マスコミなど関係機関とも一緒になって取り組めるような組織作りが必要ではないかと考えます。
最後に、お手伝い、ご支援を頂いたクラブ会員の皆様に心からお礼を申し上げます。
◆広報を担当した 大野達郎・広報委員会副委員長
「心の絆」と題した今回のフォーラムで「人とつながりをもっと大切に」という基本的なことを確認しあうことができました。自分の身近にいる親・兄弟、友だちを大切にする気持ちがあれば、「人の道」を外すことはまずないはずです。
「人とのつながり」をどうでもいいと思ってしまえば、糸の切れた凧ように寂しく無感動に人生をさまようほかない。人は他人を意識するからこそ、わが身を支えられるし、人とのつながり方・接し方のなかで自らを高めることもできるのだと思います。
小学生5年生の中能君の「心の絆は感ずるものだと思う」という発言や、高校生の町田さんの「人と真正面から向き合うことが大切」という発言などに、フォーラムの趣旨がしっかり踏まえられているなぁ,と得心しました。
安田大地さん(IBS外語学院生)
絆。絆とは何だろうか。普段目に見えるモノではないし、絆があることを感じられること自体、少なからずとも、今までの日常には無かった。しかし、このフォーラムに参加してから、日常で、絆について深く考える時間が格段に増えた。
パネリストの一人、深尾氏が言っていたように、確かに、絆は誰にでもあると思う。ただ最近、絆をより深めていこう、より強くしていこうと思っている人が減っているのではないかと思った。中でも、一番失われつつある絆が親子間の絆だと思う。子どもはTVゲームに夢中になり、親は両親共働きの家庭が増えつつある。その結果、子どもは外へ遊びに行かず、家の中で親子間の対話、コミュニケーションが失われ、愛情不足へと陥ってしまう。そして子ども達は、絆の存在に気付かず、忘れてしまうようになり、最終的には、何の罪もない母親が殺されて体を切り刻まれるという悲惨な事件が起きてしまう。
しかし、この事を逆に考えると、親子間の十分なコミュニケーションや、子どもへの愛情が行き届いていれば、犯罪や殺人事件は確実に減るということだ。前に述べた事件でも、少年と母親との間により深い絆さえあれば、もしかしたら母親は殺されずに済んだかもしれない。少年も、殺人という重い罪を背負わなくて済んだかもしれない。この、対話とコミュニケーションの重要性をできるだけ多くの人々が知り、今より深く、強い絆を作って欲しいと思う。一方通行ではなく、心の通い合った絆を。
最近、公園のすべり台に、やすりが置いてあり、子供がケガをした事件があり、本来なら子供が友達と絆を深め合うべき場所が危険な場所にありつつあるのではないかと思う。そのような危険な要素を地域、社会で取り除くべきだ。そうしなければ、これからの日本、世界は、少しずつではあるが確実に、破滅へと向かっていくだろう。
次世代を担う子ども達が、安心して絆を深め合える場所を作ること。それが、今大人達への課題であり、これから育ち行く子ども達へ唯一できる最高の贈り物なのだ。
鹿児島西ロータリークラブ・アーカイブス